始めてみよう!
「輝夜は自分のやりたい事をやればいいのよ」
その言葉が私の頭の中を響き続ける。
私は永淋の言葉に真剣に悩んでいた。
そもそもやりたい事が見つからない。
「なければそれを探すことを始めなさい」
それを見越して永淋は私にこうも言っていた。
私のやりたい事、それは何なのだろうか。
私は幸い考える時間もやりたい事をやる時間も永遠にある。
きっとゆっくり探していけばいいのだろう。
とにかく私は家の中は探検し尽くしたので、
外に出てみることにした。
永淋と一緒に竹林を歩いていた。
夜の散歩は真っ暗の中歩くのだと思っていたが
私たちの故郷の月が私たちの道を照らしていた。
その光に当たった竹は昼に見るより鮮やかな色に見えている。
「永淋竹が綺麗ね!」
この辺りの話は永淋は鈴仙に聞いているが、実際に見ていると理解度違う。
百閒は一見にしかず。
まさにこの事なのだろう。
「そうね、夜の竹林は美しくもあるけど同時に危険でもあるのよ、薔薇の花みたいにね」
と永淋は微笑んで答える。
確か満月の夜はこの辺りの妖精が暴走するらしい。
永淋との散歩は楽しくあっと言う間に時間が過ぎていく。
例え永遠の命を持っていたとしても過ぎた時間は取り戻せない。
ならこの先の時間を有意義に過ごせるために、何かを考えることが無難である。
しかしこの探し物は近くにあるとは限らないし、遠くにあるかもしれない。
そして見つかったとしてもそれが長く続くかどうかだってわからないのである。
「輝夜、やりたい事を見つけるためには考えているだけでは駄目よ」
唐突に私の考えを見抜いたように話し始めた。
「少しでも興味を持った事は何でも実行に移してみるの、それで面白かったら続ければ良いんだし、つまらなかったらやめればいいの。」
少しでも興味を持った事、考えているより始める事が大事。
私はそのキーワードを胸に刻んだ。
次の日には私のやる事は決まった。
「よいしょ、それにしても姫様は何でこんなものを」
師匠に頼まれ、姫様が欲しがっている盆栽を手に入れていた。
私が疑問なのは何故姫様がこれを欲しがっているのかが分からなくて師匠に聞くと
『輝夜のためだと思って持ってきて頂戴』
と一言言って私をおつかいに行かせたのである。
師匠と姫様の考えはよく分からないけどとにかく私は仕事をこなす事にした。
「盆栽有難う」
「え~と、参考までに聞きたいのですが何をされるのですか?」
「何言ってるのよ、盆栽を始めるのよ」
その言葉に私は驚いた。
あの姫様が自分から何かを始めようとするなんて
しかし姫様に盆栽みたいな毎日コツコツやる作業ができるのか。
そんな事を疑問に感じながら私はしばらく盆栽を見つめている姫様を見た後その場を去った。
「やっぱり盆栽は飽きたわ」
それから1週間してそう言った。
最初は永淋に教えてもらったりして手入れして
愛着が沸いたりしていたが、1週間も経つと私は飽きてしまっていた。
「まぁ最初はそうでもいつか見つかるはずよ、焦らず探していきましょう」
と言って盆栽を永淋が預かった。
私は永淋に対して笑いかけ感謝の気持ちを告げた。
「永淋有難う
盆栽も途中までは楽しかったし、まだまだ私にとって楽しいことが待っているって期待感が出てきたわ」
すると永淋は私に微笑んで頭を撫でてくれた。
何事もチャレンジしてみること、それを私に教えてくれた永淋に私は感謝した。
何時か永淋には恩返しをしないとそう心の中で思った。
私は気持ちよさそうにしていると、
私たちが取っている文々。新聞と言う新聞が届いた。
私はそれを読んでこういった。
「永淋私これやりたいな」
終