紅葉の秋に愛を誓う

紅葉の秋に愛を誓う





秋のある日の事。
ミネラルタウンは紅葉に包まれ。
色とりどりの綺麗な葉達が宙を舞う。
少し寂しげではあるがこの雰囲気は私は好きだった。
赤色、茶色、黄色私はその色たちを眼で追いじっと見ていた。

「クレアさん、こんな所でぼーっとしてどうしたんだ」

不意に後ろから声がかかる。
UMAと言う文字がプリントされた帽子を被り、海のように透き通る青い瞳の持ち主はグレイ。
一応私の彼氏だ。

「さんは付けなくて良いって言ってるでしょカップルなんだから、グレイはその癖本当に直らないね」

私は少し苦笑しながら言う。
グレイはすぐに訂正しようとして、

「じゃあクレア!こんな所でぼーっとしてどうしたんだ」

「ただ落ち葉を見ていただけよ、ミネラルタウンの落ち葉はこんなにも綺麗だって事に少し感動してね」

今年の春私はミネラルタウンにやって来た。
春の桜、明るいピンク色の桜がとても美しかった。
夏の新緑、青々として緑の濃さがとても力強かった。
そして秋の落ち葉。
都会では本当の意味で感じる事はできなかった。
何故なら都会の自然とミネラルタウンの自然は天と地の差と言っても過言ではない程の差があったからだ。
だから私は秋の落ち葉を肌で感じる事にした。

「俺は昔からいるからこの自然の凄さは当たり前の様に感じるけど
 クレアさ......クレアにとってはこの自然は素晴らしいものなんだな。
 じゃあ、俺もクレアの隣で落ち葉を見ていて良いかな?」

私はこくりと頷き、グレイと隣で落ち葉を見る事にした。
気のせいか寂しそうな雰囲気を醸し出していた落ち葉達は、急に明るい雰囲気になり始めていた。
私の気持ちの変化かもしれない。
隣にはクールでかっこよくてでも少しだけ抜けた所がある、最高の彼氏がいるからだろう。
私は少しだけグレイの手に私の手を近づける。
少しすると私の意図に気づいたグレイは私の手を握る。
とても暖かくて落ちついた。

「...............明日も来ないか?」

グレイは少し照れくさそうに小さな声で言う。
私は微笑み頷く。

やがてグレイが去っていくと、
私もそろそろ仕事に戻らなければならない時間が迫ってきていた。
私は美しく舞う落ち葉をそっと手に取り。

「今この時間がとっても素敵で有意義な時間にできた事を感謝します」

とこの落ち葉たちに感謝の意を表す。
私は落ち葉をそっと放し、すると落ち葉はまた美しく舞って行った。






翌日。
窓の外は薄暗く雨が降り続いていた。
放牧していた家畜達は小屋に戻され、牧場は暗さと寂しさに包まれていた。
私は昨日の言葉を思い出す。

________『...............明 日 も 来 な い か ?』 

この言葉が私の頭でゆっくりと響く。
この約束は生憎の雨であるので果たせなかった。
こう話すと雨ばかりが悪い存在である様に考えられるがそうと言うわけではない。
雨自身にも地域によっては恵みの雨と呼ばれる事もあるし、
雨の降った後には綺麗な星空が見える様に様々なメリットがある。
それに天気に何も罪はない、その天気をどう捉えるかそれはその人間次第である。
しかし先程の言葉を思い出すと私は雨を如何しても憎んでしまう。
とにかく明日こそはグレイと会いたい。
この思いが私の中を駆け巡る。
何時の間にかティッシュと輪ゴムを持ち、小学校以来作った事すらないてるてる坊主と言うものを作っていた。
原型を作り終えるとマジックで顔を書く。
手がすべり少しだけ目つきが悪くなってしまったが。
何となくグレイに似ている気がして私は少しだけ微笑んだ。








鍛冶屋で働き終わった俺は窓の外を見ていた。
外は雨で人の通る様子はほとんどなかった。
俺は自分で言った言葉を思い出す。

________『...............明 日 も 来 な い か ?』 

雨なんてなければ良いのに。
率直な感想だった。
俺はポケットの中に入れておいたあるものを取り出す。
それはとても綺麗な水色の鳥の羽、
青い羽だった。
これはミネラルタウンやこの辺の地域の住民が結婚を申し込む時、
この羽を使ってプロポーズをするのが慣わしだった。
今日俺はあいつにこれをプレゼントするはずだったのに、
雨のせいで渡し損ねてしまった。
もしかしたら雨のせいでなくても渡し損ねたかもしれないが。
明日こそはクレアに会おうその気持ちで一杯だった。
俺はそう心に決め決心した。
そして、クレアへのプロポーズの台詞を一人で練習していると

「何独り言言ってるんだ?」

何時の間にかルームメイトのクリフが部屋に入ってきていて驚いた、
恥かしさで俺の顔が真っ赤になる。

「うるさい何でもねぇよ!」

とすぐに誤魔化した。




翌日。
とても綺麗な晴天だった。
私はグレイに会いたい気持ちであの時と同じ場所で待った。
考えてみるとグレイが来るかどうかなんて分からないのに、
何故私は来たんだろうと思った、正直来るか心配だった。
しかしその不安はすぐ晴れて、グレイが私の元に走ってやってきた。

一昨日とは違い木の下に座り木を背にして、落ち葉を鑑賞した。
私は木に寄りかかりゆっくりと時間を過ごす。
そうしているとグレイから肩を叩かれる。

「クレアさ.....じゃなくてクレア!
少し聞いても良いかな、クレアはミネラルタウンに来て幸せ?」

私はグレイの質問に対してこう答える。

「幸せだよ、自然だって豊かだし。
 街の人たちは良い人ばかりだし、それに......グレイもいるしね」

そう答えるとグレイの顔は真っ赤になる。
すぐにグレイは何かを言おうとしたが声になっていなかった。
私は頭の上に?マークを表示しながらグレイが喋り出すのを待った。



俺はポケットに手を突っ込み、後は口を動かそうと必死だった。
この流れは最高のシチュエーションであるのにそのチャンスを逃す事はできない。
あのじいさんが俺のこんな姿を見たら未熟者と一喝するだろう。
俺はじいさんに鍛冶で半人前扱いされる日々を思い出す。
ここできっぱりとプロポーズできなかったら男としても半人前だ。
そう思い一度深呼吸をし落ち着いたところでこう言った。

「俺も幸せさ、この町は本当に良い所だしね。
 これは俺のわがままかもしれないけどクレア、俺はおまえと一緒に幸せになりたいんだ
 これからはおまえと幸せをずっと共有していきたい!
 クレア結婚してくれ!」

青い羽を取り出し俺はすぐに自分で言ったことを思い出し恥ずかしくなる。
もう後には引けない、後は返事を待つだけだった。



私はグレイが差し出した青い羽を見て驚く。
こんな早くプロポーズを受けるとは夢にも思っていなかったからだ。
私は驚きと喜びでどう答えて良いか分からない。
けどグレイは私に勇気を持ってプロポーズをしてくれたのは分かっているので
私はすぐにこう答える。

「何ぼーっとしているの、そんなにぼーっとしていると
 目の前のお嫁さんが何処か行っちゃうわよ」

私は捻くれてこう答えると。
グレイは発言の意図に気づいて驚いていた。
私は青い羽をグレイから受け取る。
私はその羽をじっくり見た。
『私の宝物にしよう』そう心に決めそっとポケットに入れる。

「クレア、その俺.........................今最高に幸せな気がするよ」

「私も、グレイ大好き!!」

と私はグレイに抱きつく。
グレイは少し戸惑ったが冷静になり私をすぐ受け止めてくれた。



二人は今。

この秋と言う季節に。

紅葉に包まれたミネラルタウンで。

永き愛を誓った。