TRAIN~思い出~

 

TRAIN~思い出~
 
 
 
 
「なるほどくん♪今日は街まで買い物に出かけるよ!」
 
とスキップをしながら真宵ちゃんは言った。
今日は街に買い物に出かける日で、真宵ちゃんは凄く楽しみにしていた。
電車で1時間程の距離にある街でどうやら真宵ちゃんはお年頃でオシャレがしたいそうだ。
何時も同じ様な服のくせにとか言うと怒り出しそうだからやめておいた。
実際僕も青スーツしか着ないので人の事は言えないが。
 
駅に行く途中何やら人混みができていた。
その人混みを見ると何やら何処かで見覚えのある、茶色い綿飴の様な髪型をした女性の姿が見えた。
僕はそれに気づくとその女性の肩を叩いた。
 
「ナツミさん、どうし...............『邪魔や!』」
 
僕の声はナツミさんの怒声にかき消された。
 
「なんやあんたらは取材の邪魔や!
 うちは忙しいんや!とっとうちの前から.............あんたナルホドーやないか」
 
どうやら僕達の事は覚えていたらしい。
ナツミさんにこの人混みの事情を聞く事にした。
 
「実はなこの人混みの奥には今話題になっている新しいトノサマンシリーズの役者さんがいるんねん
 あんたも知っている通りその役者はある女優との熱愛が発覚している。
 ここでその役者が一般人とうちに見つかったのは偶然やけど、その熱愛について取材すればスクープが取れるかもしれへん
 とにかく一山当てるからあんたたちはっきり言って邪魔や」
 
と言ってそのまま人混みに紛れて行った
会ってから3年が経つが相変わらず野次馬根性のある人だった。
昔はそれに相当振り回されて大変だった。
今では良い思い出と思い返して、また同じフラグを踏まれてからは
悪い思い出として認識している。
人混みを置いて先を急ぐ事にした、
 
駅は電車の走る音が五月蝿く響き渡っていた。
僕と真宵ちゃんは駅の緑色のベンチに座った。
すると機械音でアナウンスが聞こえてきた。
 
『2番ホームに電車が参ります』
 
「わぁ電車来たよなるほどくん!」
 
「真宵ちゃん.......今来た電車は逆方向に行く電車だよ」
 
と僕は少し呆れ気味に言った。
確かに倉院の里に行くのならば2番ホームで合っているが。
そう思っているうちに僕の後ろに風を切り、五月蝿く走る音出す電車が通り過ぎる。
走っている途中なので模様の赤いラインが残像になって霞んで見えてくる。
しばらくすると動きが遅くなり停車した。
この電車とさっき会ったナツミさん。
この2つの事柄から僕はあの事件を思い出した。
真宵ちゃんの顔を見ると真宵ちゃんは神妙な顔をしており口を開いてこう言った。
 
「私懐かしい事思い出しちゃったな。
 クリスマスに起きたあの事件。」
 
クリスマスにひょうたん湖で起きたあの事件。
ナツミさんの撮った写真のおかげで事件は混乱したが、その写真は事件を解決する糸口になった。
あの事件が解決した後、真宵ちゃんが残した手紙を読んだ時の気持ちを覚えている。
彼女は何時も僕の近くにいるのに僕の役に立てない事に責任を感じて、
僕の前から姿を消そうとした。
その時僕はとにかく真宵ちゃんに会わなければいけないと思った。
真宵ちゃんは役に立たない子じゃない。
それをとにかく伝えたかった。
僕はとにかく走った駅まで猛ダッシュだった。
 
 
 
 
私は電車とナツミさんを見てあの時の事を思い出した。
私はなるほどくんの役に立てなかった自分が許せなかった。
だから手紙を書いて霊媒の道に本気で取り組むために姿を消そうとした。
手紙を書く時、手紙を涙で濡らして何度も書き直したのを忘れない。
結局置いた手紙にも最後のほうに零した涙が残っていた。
電車を待ち、この街と成歩堂法律事務所にお別れをするまでもうすぐの時だった。
アナウンスが流れて電車が来た瞬間、なるほどくんが走ってきた。
ギザギザでツンツンした髪の毛は少しだけ崩れて、顔は汗だくだった。
私はなるほどくんと直接話して役立たずだから消えると話した。
なるほどくんはこんな時でも法廷の時の様に真宵ちゃんが役立たずじゃない証拠品を突きつけると言って、
なるほどくんはポケットから何かを取り出した。
 
『これがその証拠だよ!』
 
と言って金色の弾丸を突きつけた。
これは私が無意識のうちに守り抜き、狩魔にとどめの一撃を与えた証拠品だったそうだ。
私はその時決めた。
 
 
_______________必ずここに帰ってこようと。
 
 
一人前の霊媒士になってもっとなるほどくんの役に立てる人間になって帰ってくる。
私を必要としてくれる人がいるから必ず帰ってきたい。
そう誓って私は修行し、今もここで助手兼副所長をしている。
 
『1番ホームに電車が参ります』
 
私の考えを遮る様にアナウンスが聞こえてきた。
 
「真宵ちゃん行くよ」
 
「うん」
 
私はにっこりと頷く。
 
何時も私は守られてばかりで今でも役にたててるか微妙な所だが。
明るく、少し熱血ななるほどくんに私は付いていく。
 
私にとって成歩堂法律事務所。
 
 
 
 
 
__________________なるほどくんの隣が私の居場所なのだから。
 
 
 
 
 
 
あの時何故走って駅まで向かって真宵ちゃんに会おうとしたかと言えば。
僕は真宵ちゃんにずっと隣にいて欲しかったのかもしれない。
何時も元気で明るい真宵ちゃんに傍にいてもらいたい。
 
 
__________________きっとそれは、
 
 
 
 
 
 
 
 
                                    真宵ちゃんは僕にとって最高のパートナーだからだ______________________