影を照らす光

 

影を照らす光
 
ここは渡る者もほとんどいない地底の橋。
その橋に私は一人橋守としてそこに存在している。
しかし誰も渡る事のない橋に一人佇むのは相当退屈な仕事だった。
私、水橋パルスィは嫉妬の妖怪で何に対しても嫉妬をしてしまう。
 
「ああ地上の光が羨ましい、羨ましい」
 
橋から聞こえる声は嫉妬する声しか聞こえるはずもなかった。
この間までは……………………………….
 
「パルスィ遊びに来たぞーー!」
 
「だからこの前から橋は遊びにくる場所ではないって言っているじゃない」
 
すると彼女は持ってきた酒を取り出す。
飲まないかとばかりに酒を差し出してくるので私が首を横に振ると。
そのまま杯に酒を入れ私に見せ付けて飲み始めた。
私が嫉妬の妖怪だと言う事を利用して私にも飲ませようとしているのだろう。
分かっていても私は勇儀から酒を貰った。
 
「まぁいいじゃないか、おまえも一人じゃ退屈だろう」
 
と勇儀は笑って話す。
退屈なのは否定できなかった。
私は杯のお酒を飲み干す。
 
「キスメとヤマメも連れてきて今度宴会でもしないか!
 酒は私が提供するよ」
 
「貴方は騒がしいのが好きなのね、遠慮するわ」
 
勇儀は宴会と力比べが大好きだ。
何処かで勇儀は鬼四天王の一人とも呼ばれるぐらいの実力者らしい。
当然私の様なその辺にいる妖怪などに本気で戦ったら瞬殺されるだろう。
私は勇儀が本気で戦っている所を見た事はない。
 
元気で騒がしい彼女が来た事によって場が少しだけ明るくなった気がした。
すると勇儀は急にこう質問してきた。
 
「パルスィ、おまえは寂しくないのかこんな所でずっと一人でいて」
 
「別に」
 
冷たくこう答える。
最近は勇儀が着てくれているが、地上の光の恋しさ。
地上の光を浴びれる奴らは皆嫉妬対象だった。
しかし同時に私は嫉妬の塊の黒い影の様な私を明るさで照らしてくれる奴が現れる事を待っていたのは事実だった。
勇儀が来てからはその事に嫉妬する事はなくなっていた。
むしろ私が嫉妬してしまうのは勇儀だった。
勇儀は周りの人望も厚く、そして何より明るい。
私が影なら彼女は光なのだろう。
彼女の明るさ、人望の厚さに私は何時も嫉妬してしまう。
 
「ぱるぱるぱるぱる..............。」
 
こう呟くと何かを勘付いたのか勇儀が心配してきた。
 
「また何かに嫉妬してるのか、パルスィや」
 
嫉妬する時はこう呟いてしまうので。
勇儀に読まれてしまった。
 
「何に嫉妬していたんだい?」
 
言えない、勇儀に嫉妬していたなんて死んでも目の前で言えなかった。
私は黙ってしまう。
困っている私の様子を見ると。
 
「おまえは本当に手のかかる奴だよ。
 まぁ嫉妬の妖怪に嫉妬するなって言うのも無理がある事は分かっている。
 だったら私はおまえの全てを受け入れてやるさ。 
 おまえが影なら私は光だ、お前を明るく照らしてやる。
 パルスィ!これを言うのは私も照れるけど
 だからさ、これからは私について来い!」
 
と手を差し伸べてこう言う。
相変わらず私はカッコよすぎて嫉妬してしまっていた。
だけど世界は光があるから影ができる。
光がなければ影がない。
光を失えば私は存在できない。
勇儀がいるからこそ私は存在できている。
私は照れくさそうに差し伸べた手を握った。
 
「なぁパルスィ、さっきの話だけど宴会開かないか?」
 
勇儀の誘いに私は笑顔で答える。
 
「うん!」
 
それは生まれた時から一度も見せた事がなかった。
ただただ純粋な笑顔だった気がした。
 
 
 
終わり