半獣と人間

半獣と人間

それは隙間から差しこむ月明かりさえない夜の竹林だった。
私は歴史家で副業として子供達に歴史を教えている。
私はそこに迷い込んだ幼い子供を助けるためその竹林へと入っていった。
私は香霖堂でかなり前に買ったこの懐中電灯と言う物を使っている。
香霖堂は道具屋で外の世界の道具まで売っているので、
こう言った便利な品が手に入ったりする事がある。
如何言う仕組みで動いているかは知らないが真ん中の部分が激しく光り、
私の前方を照らしていた。
しかし段々と光が弱弱しくなっていく事に気づき始めた。
次の瞬間。
目の前が真っ暗になった。
懐中電灯が光を発しなくなったのだ。
この後、香霖堂でこれを電池切れと言う現象が起きたと説明される、
この世界は科学が余り発達していないので、電池などは香霖堂にしか売っていないそうだ。
それにしても困った事になってしまった。
これでは辺りは暗闇になり子供を助ける事は勿論難しくなり、
自分が帰れるかどうかと言う問題も生まれてくる。
私が頭を悩ませていると..................................................。

「そんな得体の知れない物で何とかしようと思ったからこうなるのよ、慧音」

何時の間にか上に炎で出来た羽を広げた妹紅がいた。
妹紅はそのまま地上に降りてくる。
羽の炎は灯したままこう言った。

「この羽なら明かりになるし、無制限とはいえないけど長い間明かりとして使用できるわ」

「感謝する、さて子供の場所は何処だろう」

私は妹紅の光を頼りに歩いた。
すると付け足すように妹紅はこう言う。

「後永遠亭にはいかないでよ、私にとっては以上に面倒くさいから」

月の姫の事だろう、名は輝夜だった。
妹紅が月の姫と会うと必ず弾幕が始まるので、面倒くさくなりそうだから永遠亭には行きたくない。
それに子供にしても普通の人間が永遠亭に迷い込むなんて本当に10万回に1回あるかないかの可能性だ。
その可能性は考えずに探したほうが見つかるだろう。
とにかく竹林は広い迷い込んだ子供を捜すなんてどうすれば。

「私がこの周辺を焼き払うからそれに気づいて迷い込んだ子供が寄ってくるかも」

と妹紅の考えに対し、

「焼き払って如何する?気づいたとしても子供が逃げて見つかりにくくなるだけだ」

「好奇心旺盛な子供だったら寄って来ると思うんだけど」

そもそも竹を焼き払うと言う暴挙に出る事事態がおかしかった。
すると妹紅は少し笑い出し。

「嘘嘘、冗談。でも子供の名前を呼んで探してみたら?」

「それは良い案だがあいにく私はその子供の名を知らない」

この状況は非常に不味い事態だった。
私はせめて耳を澄まして、子供の声を聞き取ろうとした。
こちらから呼びかける事が無理なら相手が発する情報を感じ取れば良いのだ。
妹紅の炎を明かりにし歩いていると初めて炎の燃える音以外の音が聞こえた。
ガサッ!
草むらが揺れる音だった私はそれを見逃さず音が聞こえた場所を調べる。

「!?」

「ああ、悪戯に使った残りのロープは何処いったのかな」

それは子供の外見をした地上の兎だった。
名は..............、てゐと言った気がする。

「君は深夜に何をやっているんだ?」

と私が質問すると、

「鈴仙に悪戯した時に使ったロープの残りを落としちゃってそれを探しているの。
 元々師匠の物だから勝手な事に使った事がばれたら.........................................。」

と言う事は子供の姿を見ているかもしれない、
私が質問すると、

「直接見ていないけど気配がしていたよ、ずっと動かなかったけどね。
 確かもう少しここから奥の方にいたよ、と言う事で邪魔しないでね」

てゐの言う事が本当ならば恐らく奥にいるのだろう。
普段なら信用しない所だが、今はどうやら追い詰められているので嘘をつく余裕などないはずだ。
本当の可能性が高い。
私はもう少し奥に進んでみる事にした。

私は奥に進む間聴覚を研ぎ澄まし、僅かな音でも感じ取っていた。
妹紅は最初は暇だから話しかけてきたが、私のやっている事に気づくと黙った。
その時何か泣き声のような音が聞こえた。
音は右の方向から微かに聞こえてくる。
私は急に方向転換し音が聞こえてくる場所に向かった。
音がすこしずつ大きくなっていく。
妹紅にも聞こえるぐらいの音になってきた。
右の方向に走った先には泣いている女の子がいた。

「大丈夫か、もう安心だ私が無事家まで送り届けよう」

私が手を差し伸べると女の子は涙を拭き、
にっこりと笑って私の腕を掴んだ。

「有難う慧音先生」

私は女の子の言葉に驚く。
教え子でもないのに私の職業を知っているのだろう。
私がそれを聞くと。

「お兄ちゃんが慧音先生の教え子だしもうすぐ私も慧音先生に歴史を教えてもらえる年齢になるんだよ!
 後ね!!私教師になるのが夢なんだ、大きくなったら慧音先生みたいな良い先生になれるかな!」

「そうか、沢山勉強すればなれるさ、私がその手伝いをできるか分からないがしっかりと授業を聞くんだぞ。
 後もう竹林には絶対入るなよ」

「うん!」

女の子は元気良く頷いた。
私は女の子を家に送り届け、夜明けも近い頃に帰ってきた。

「疲れたね!」

と妹紅は同意を求めたので頷く。
私は使えなくなった懐中電灯を机に置くと、
妹紅はこう話した。

「慧音って人間に優しいよね、女の子に対しての態度を見てて分かるよ。
 私も一応人間なのに私には少し冷たいよね慧音は」

と寂しそうに話すと。

「おまえは不死だから正確には人間ではないからな
 死なない人間は人間ではない」

少し落ち込んでしまった、少し言い過ぎたと反省し
私はすぐにこう言った。

「冗談だ、何だかんだ言っておまえの事は大切に思っている。
 私も半獣だし、おまえの場合は進んで不死になったから事情は違うが私もおまえも人間とは分類できない。
 似たもの同士だからこそ仲間になれる、今日だって妹紅の助けがなければ女の子を助けられなかった。
 おまえとはお互い助けあえる、最高の仲間だと思っているよ」

もし妹紅が困っていたら私はすぐ助けるだろうし、
私が困っていたら妹紅は今日みたいに助けてくれるだろう。
それは当然の様であるが、そんな仲間を持てるのはとても幸せな事なのだろう。
私はその幸せを胸に明日も頑張って行こうと思った。

その発言を聞いて安心した妹紅は欠伸をして椅子に座ったまま寝てしまった。
私は妹紅の背中に優しく毛布をかけ、私は少しだけニッコリと笑った。