裏返し

 

裏返し
 
 
それは永遠亭の深夜の事だった。
永遠亭の扉を叩く人物がいた。
それは何時も来るあいつだった。
あいつは今日も私に勝つ気でいるようだった。
私は外に出て改めてあいつと確認する。
予想通りあいつは私を鋭い目で直視していた。
 
「輝夜!今日こそ私の父が受けた屈辱を晴らしてみせる」
 
「やれるものならやってみなさい!返り討ちにしてあげる」
 
何時も通り強気に口で相手を攻撃する。
先ほどからあいつと紹介していた、私を眼の敵にしている人間は藤原 妹紅と言う。
人間のくせに不死の能力を持ち、能力に関わらず何故か炎をが出せる不思議な人間だ。
私たちは場所を変えるため竹林に入っていった。
 
 
「くらえ!!!」
 
炎のように赤い玉が私に襲い掛かってくる。
私はそれを辛うじて避け、私の攻撃に移る。
外れた弾幕は竹をも燃やす。
 
「くっ!」
 
7色の虹色の槍上の弾幕が妹紅に襲い掛かる。
妹紅はかろうじてそれを避け続ける。
外れた弾幕は地面をも抉る。
それを繰り返した。
 
夜が明けようとした時、何時もの通り私と妹紅は自分のいるべき場所に帰っていく。
私も妹紅も同じぐらいダメージを受けている状態だった。
こんな事が妹紅が私に姿を現したときから定期的に続いているのでうんざりしてくる。
 
私が永遠亭に戻ると永淋が私の事を待っていた。
 
「輝夜今日も戦ってきたのね、ダメージも大きいみたいだし薬を出すわ」
 
と言って私をすぐに家に上げ、手当てを行った。
私の心は妹紅への怒りで一杯だった。
妹紅は過去を気にしすぎている。
妹紅は過去に自分の父と自分自身が受けた屈辱を晴らすためだけに戦ってくる。
何故彼女は私と同じ不死の体でありながら、
限りのない未来より限られた過去を大事にするのか。
それが私にはどうしても理解できなかった。
 
「何時か私に二度と会いたくないって思わせるぐらい痛い目に会わせて上げるわ!」
 
と永淋にそれを宣言すると、はいはいとてきとうな返事が貰えた。
 
「でもその感情も裏返しで考えるのなら.........................」
 
「どういう意味よ!」
 
しかしその質問には返答すらなかった。
 
 
 
 
ここは竹林を抜けた先にある人間の里。
私がボロボロになって帰ってくると慧音の姿があった。
 
「妹紅!今日も戦ってきたのか、手当てをするからとりあえず家に上がれ」
 
と言って私をすぐに家に上げ、手当てを行った。
私の心は輝夜への怒りで一杯だった。
輝夜は過去から逃げ過ぎている。
輝夜は目の敵にしてくる私を眼の瘤の様に思い、臭い物に蓋をするために私を倒しにかかる。
不死の体を持ったからと言って、
未来ばかり気にして過去にした過ちを忘れるなんて信じられない。
それが私にはどうしても理解できなかった。
 
「何時か父の受けた屈辱と私の受けた屈辱倍にして返してやる!」
 
と宣言すると慧音はそうかと呟きそのまま流した。
 
「まぁ裏返しと言う事もありえるがな...........................」
 
「どういう意味!」
 
しかしその質問には返答すらなかった。
 
 
 
ピョンとスキップしながら、白い小さな尻尾を揺らしていた。
翌朝の事、私は昨日戦闘があった竹林の辺りにやってきた。
予想よりも酷い有様であった。
竹は焼け、地面は抉られ、この辺りだけはすでに別の空間と化していた。
 
私は因幡 てゐ、今日も悪戯のネタを探そうと面白い事に今日も首を突っ込んでいた。
最近気になるのは妹紅が戦いを申し込む頻度が増えたと言う事だ。
逆に来ない日は姫様から勝負を申し込む場合だってあった。
こんな事が毎日繰り返されれば安眠妨害と自然破壊につながってしまう。
その時私はある悪戯を思いついた。
ある意味人や自然のためになり面白そうな悪戯だったので、私はすぐ作業に取り掛かる事にした。
 
昼の事昼食の時ようやく姫様が眼を覚ました。
今まで戦って疲れて休んでいたのだ。
私は味噌汁を皆に運び食事の準備をした。
 
「今日は偉いわね、何時もなら進んでやりそうもないのに」
 
師匠に褒められた。
そしてそのまま食事を始めると、
 
「今日もあいつ来るのかしら、今度こそ返り討ちにしてやるんだから」
 
と妹紅にむかつき姫様は味噌汁を一気飲みした。
 
「大体あいつは..............................」
 
その先に続く言葉が出ず黙ってしまった。
悪戯成功だ。
実は私は味噌汁に永淋の作った青い液体式の惚れ薬を混ぜておいたのだ。
前に鈴仙からその惚れ薬の存在を聞いていたので、永淋の薬倉庫で惚れ薬と言うラベルの貼ってあった薬を取り味噌汁に混ぜたのだ。
わざわざ進んで雑用をしたのもその準備だった。
この惚れ薬の効果は服用した人間が考えている人間に強制的に好意を持たせる秘薬だ。
効果のある時間は1日程度だが、少なくとも今日は戦いが起こる事はないだろう。
私の予想だと面白い事になりそうだ。
 
 
 
その日の深夜、私は今日こそ輝夜を倒しに永遠亭にやってきた。
何時も通り力強くノックする。
静かな夜にノックの音が響き渡る。
すぐに輝夜が姿を現した。
 
「輝夜今日こそ、おまえを,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,」
 
「あら、妹紅じゃない!遊びに来たのねさぁ上がって上がって」
 
私は自分の耳を疑う。
今なんて言った?自分に自問する。
復習が目的の私を家に入れるとは何を考えている。
作戦かと少し思い私は揺さぶりをかける。
 
「私を家に上がらせた所をここの住民に奇襲させる魂胆ではないの?
 そんな事に私は引っかからないわ!」
 
私がそう言い放つと、
輝夜は涙目になってこう言った。
 
「どうしてそんな汚い事しか考えられないの、貴方だって私と同じ不死の体を持った人間なのに」
 
一体如何言う事なのか、私の頭は混乱していた。
輝夜の目的は単に私と仲良くしたいだなのか?
あまりにも唐突な事に私は戸惑いを隠せなかったが、とにかく家に上がる事にした。
 
永遠亭には初めて入る。
私と妹紅が向かい合い座り、薬屋の兎がお茶を持ってきた。
私は毒でも入っているのではないかと疑い、お茶を飲まないでいると。
 
「もしかしてお茶気に召さなかったかしら、作ったのは私なんだけど」
 
と優しく声をかける。
その声を聞いて私はお茶を飲んでしまった。
しかし苦しくなったり痺れる様子はない。
 
「それにしても妹紅の戦う姿ってかっこいいよね、炎を纏っていて不死鳥って感じがするわ」
 
褒め殺しかと思い聞き流そうと思ったが、
 
「いや輝夜の虹色の弾幕も美しく綺麗だと思う」
 
私はさっきから何を言っているのだろう。
輝夜の調子が読めないからと言って心にも今まで微塵に思ってない台詞が出てきてしまった。
 
「ねぇ妹紅これからはさ、お互い仲良くやっていかない」
 
先ほどから驚く台詞を何度も言っている中で一番驚いた台詞だった。
もはやいまの輝夜に裏などない気がしてきた。
考えてみると輝夜に一度言われた事で印象に残っていた、
『貴方は限られた小さな過去に囚われて人生を損するパターンね』
と言われた事を思い出す。
確かに父と私は屈辱を受けた。
だがしかしそれは過去の話、
もし目の前のこの人が私と本気で仲良くする気があるなら、
 
 
私は.............................................。
 
 
その時だった、急に輝夜が立ち上がって、
こう言った。
 
「うん?あれ私今まで何を,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,って妹紅何で貴方がここにいるのよ!!」
 
私は更に混乱する、何でって貴方が私を家に上げたくせに。
 
「とにかく今日は遅いからさっさと帰りなさい、明日来るなら相手してあげるわ」
 
さっきまで仲良くしようとか優しい言葉をかけてきたのに、
もはや意味が分からない。
さっきまでの輝夜とは人が変わってしまったようだ。
ただ単にからかわれていたで済む話だが、何故か納得できなかった。
とにかく今の輝夜は私の父と私に屈辱を与えた女だ。
何時か必ず仕留めてみせる。
こうして謎だらけの一日は終わった。
 
 
 
翌朝の事、少しだけ寝不足だが夜には良いものが見れた。
予想通り姫様の発言と妹紅の戸惑う仕草は見ものだった。
私は今回の事件を招いてくれた惚れ薬をもう一度見るため師匠の薬倉庫を見る事にした。
 
様々な薬が棚に並べられている。
一つ一つの薬にラベルが貼られきちんと整理されている。
私は惚れ薬の置いてある棚まで来て惚れ薬を取った。
しかしその惚れ薬のラベルは自白剤~2型~と言う薬に変わっていた。
青色の液体にこの嗅いでいると少しだけ心臓がドキドキしてくる感じ。
間違いなく惚れ薬のはずだった。
確か昨日夕方師匠は薬の整理をしていた。
おそらくその時にラベルの貼り間違いに気づいたのかもしれない。
しかし何故輝夜に薬が効いたのだろう、私は薬の説明を読む。
 
今考えている事柄に対する本当の気持ちを引き出す効果あり。
効果が続いている間は服用者は嘘がつけなくなる。
主に嘘発見機の様な役割を果たす。
 
この薬の効果は本当の気持ちを引き出すだけの効果。
だったらあの姫様の発言は.........................。
そんな訳があるわけがないと自分に言い聞かせた。
そして今日の夜も、
また妹紅は姫様に勝負を挑んで来るのだろう。