再生

 

プロローグ
 
※最後はアテネとハヤテの両方の視点で物語が進みます。

僕は綾崎ハヤテ、三千院家で執事をしている。
その時僕は昔の夢を見た。
昔の夢とは僕が幼少の頃の思い出であり。
そして、僕の罪の記憶である。
しかし僕には一つだけ思うことがある。
今日見た夢で忘れかけていたその思い出を思い出した。

これからその事を振り返っていこうと思う。
「再生」と言う言葉をテーマにして........。






この事は数年前僕が子供だった頃の話だ。
あの頃僕は父の最悪な行動に絶望した。
無我夢中で走った先ではある女の子と出会った。
金髪の髪、綺麗な朱色の瞳神々しい雰囲気を持つひとだった。
そして、彼女は僕に

「__________左手ぐらいなら貸してあげますよ」

彼女は死を覚悟した僕に手を差し伸べた。
僕に生きる希望を与えてくれた。
だけどそんな彼女を僕は傷つけた。
その事は今でも悪夢として蘇って来る。
そしてこのお話は幸せだった2ヶ月の空白の物語だ。

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気持ちの良い朝だった。
外の景色は相変わらずあの鏡でしか見れないが。
隣で寝ている彼女は相変わらず寝起きが悪いらしく
相変わらずぼーっとしているようだった。

「おはよう......ハヤテ」

と眠そうな声で言う。
何時も神々しく堂々としている彼女の意外な一面でもある。
ちなみに彼女の名は天王州 アテネ。
彼女によるとこの世で最も偉大な女神の名前だそうだ。

「おはよう!あーたん!」

僕は彼女の事をあーたんと呼んでいる。
略したつもりだが、文字数が増えているのはあえてスルーする方向が良いだろう。
そして、僕は彼女の執事をしている。
なので。

「ハヤテそろそろ朝食の用意をしてちょうだい」

とまだ子供だが執事らしく日々精進している。
掃除も段々やり方も分かって早くできるようになった。
料理も少しずつ色々な物が作れるようになってきた頃だった........。










あの事が起きたのは...........................。





鍋から美味しそうな香りがただよってきた。
味見をするととても美味しい。
彼女も喜んでくれるだろう。
お皿に盛り付けようと皿を出そうとした。
毎回思うがとても綺麗な皿だ。
彼女が使うのは他の皿よりも更に綺麗な皿だ。
これに盛り付けようと、皿を取り出そうとした瞬間.......。

ガシャーン!!

耳に悪い声が僕の中で響く。
言うまでもなかった。
皿が割れてしまったのだった。
高級な皿、彼女が気にっていた。
この2つのキーワードが僕の心で駆け巡る。

「ハヤテー!大丈夫.......」

その瞬間彼女が僕の様子を見にやってきた。




最悪のタイミングだ__________









 
僕と彼女は氷つく、時間は3秒しか経っていないはずなのに
何倍にも感じられる。
ようやく彼女の口が開き。

「ハヤテー!!」

当然怒られる。
何時も白くて綺麗な肌は少しだけ赤みがかかった。
僕はあたふたしてどうすれば良いのか分からなかった。

「ごめんなさい!」

と叫ぶ事ぐらいしか僕にはできない。
しかし謝って済む問題ではない。
彼女が大切にしていた皿だったはず、絶対に高級な物だと分かっていた。
それなのに僕は丁重に扱うことができなかった。
僕はあーたんの執事失格だ。
そう思っていた僕に最後の一撃が。

「出ていって..........」

彼女の口から放たれた冷たい一撃に僕はこの場を後にした。
僕は泣きたくなったが我慢をした。


_________だって僕が悪いんだから



そう悪いのは全て僕だ。
泣きたくなるのは彼女なんだから。
結局僕はまたひとりぼっち。
そう言って僕は重くて威厳のある扉を静かに開き、
城から出て行った。
しかし出て行くにもここがどこなのかどうかも分からなかった。
人間の世界なのかどうかも微妙で、
ずっと歩いても綺麗で色取り取りの花が咲いている。
心和まされる風景だが、何歩あるいても変わらない。
さすがに不安になってきた。

足も痛くなりもう庭に倒れこんでいた。
体力の限界だ、前方の綺麗な花も目が霞んで綺麗に見えない。
気を失いそうになったその時。

「駄目よ、こんな所で倒れちゃ」

「あーたん!」

「大丈夫一人で立てないなら、左手ぐらい貸しますよ」

「あーたん!!」

そう言って彼女の腕を掴もうとした時。
からぶって彼女も消えてしまった。
幻だった。
僕は自分のマヌケさに少しだけ笑った。
そう全てが幻だったのだ。これで辻褄が合う。
彼女の存在も此処の存在も全て幻だったのだ。
起きれば自分の家、又は死ぬ前に見た夢だったのかもしれない。
どちらにしても行き先は地獄だろう。
僕はそう思いながら気を失った。
 
 

夜の事私は夕食の準備をした。
何時もならハヤテがやってくれるのだが、
ハヤテに酷い事を言ったので、自分で作って怒っていない事を伝えたかったのだ。
私もさっきまではお気に入りの皿を壊され怒っていたが.......。


皿を失うことよりハヤテを失いたくなかった。


その気持ちが強かったので私はハヤテを許すことにした。
私はハヤテがいると思われる寝室に向かったが.......。
部屋はもぬけの空だった。
私は全ての部屋を一生懸命に探したが見つからない。
私はその時気づいた。


「出て行って」


こう言い放った私の言葉をハヤテは勘違いし城から出て行ってしまったのだ。
私はこの部屋から出て行けと怒っただけなのに.......。
とにかく外に行って私はハヤテを探すことにした。
夜寒かったがそんな事を気にする余裕はない。
私は叫びながら走った。


「ハヤテーー!!」



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僕の意識は朦朧としていた。
何も聞こえないとにかく何も見えない。
そんな中僕は幻であっても彼女にした罪を反省する。
反省したって遅いのに.........、僕は一体。
とその刹那に.......。


「ハヤテー!」


微かに声が聞こえた。
だけどこれも所詮は幻に違いない。
すると。


「ハヤテー!!」

更に声が大きくなる。
僕は意識を取り戻した。
これは間違いなく彼女の声だ。
彼女は僕を探している。
なら返事をしなくては.....。


「あーたん!!」


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今の声はハヤテに違いない、そう思った私声のする方向に走り出す。

「ハヤテー!!」


「あーたん!!」


「ハヤテー!!」


行き着いた場所で、ハヤテは庭の泥で服はかなり汚れていた。
行き着いた場所で、彼女は半泣きになり本気で僕を心配してくれていた。


私はハヤテに抱きついて思い切り泣いた。
僕は抱きついてきた彼女をしっかり受け止めた。


「ごめんねハヤテ!皿を割ったぐらいであんなに怒って
 でも私を一人にしないで!
 一人ぼっちは寂しいし何よりハヤテが大好きだから」


「ごめんねあーたん!もう一人にさせないよ
 僕だって




あーたんの事大好きだもん________________






しばらく僕たちはそのまま抱きしめあったんだ。
これが僕の昔の記憶.......。
この時約束した「もう一人にさせないよ」は残念ながら破ってしまった。
でもこの思い出を僕は今思い出せた。
あーたんは僕よりもずっと頭が良いし、
もしこの事をあーたんが覚えているのなら、
仲直りできる気がするんだ。


_________だってあの時だって喧嘩してちゃんと仲直りできたんだから。